そこが知りたい 2012(平成24)年2月号

リネゾリドとモノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用
 
 MAO は,カテコラミンやセロトニンといったモノアミン神経伝達物質を酸化的脱アミノ化して不活化する酵素であり,神経終末や細胞内ミトコンドリアなどに存在している。MAO にはA とBの2つのアイソザイムが存在し,MAO-A はセロトニンとノルエピネフリンを優先的に代謝する。またパーキンソン治療薬のセレギリンは選択的MAO–B 阻害薬である。 オキサゾリジノン系抗菌薬リネゾリドは,このMAO に対して非選択的,可逆的な阻害作用を有しており,MAO 阻害剤(セレギリン),アドレナリン作動薬,セロトニン作動薬,チラミンを多く含有する食品とは相互作用を起こす可能性があるため,添付文書において併用注意とされている。
 また重篤副作用疾患別対応マニュアルの「セロトニン症候群」において,同症候群を発現させる可能性のある薬剤にリネゾリドと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の併用が挙げられている。
 今般,FDA ではリネゾリドとセロトニン作動薬との併用について,重篤な中枢神経系反応を精神科治療薬服用患者に引き起こすリスクがあるとして患者及び医療従事者への追加情報を通知している(Drug Safety Communication 2011/07/26,2011/10/20付通知)。
 医療従事者への追加情報としては,下記の情報(抜粋)が挙げられている。
・リネゾリドはセロトニン作動薬と相互作用し,重篤なCNS 毒性を引き起こすことがある。
・リネゾリドを用いた生命を脅かす症状の治療や緊急治療を要する緊急事態では,代替治療を利用できないか検討すべきであり,リネゾリド治療のベネフィットとセロトニン毒性のリスクを比較考量すべきである。セロトニン作動薬を使用している患者にリネゾリドを投与しなければならない場合,セロトニン作動薬を直ちに中止し,CNS 毒性の緊急症状がないか2週間,またはリネゾリドの最終投与から24時間後までのいずれか早い時期まで,患者を注意深くモニターすべきである。
・リネゾリドを使用している患者にはセロトニン作動薬を開始すべきでない。リネゾリドの最終投与から24時間後まで,抗うつ薬の開始は待つべきである。
 また,セロトニン作動性の向精神薬のすべてがリネゾリドとの併用によりセロトニン症候群を等しく引き起こすわけではなく,FDA 有害事象報告システムに報告されたリネゾリド関連のセロトニン症候群のほとんどは特定のセロトニン作動薬,すなわちSSRI またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)を併用している患者に発生していたと報告している。FDA は新たな情報が得られ次第,更新情報を通知する予定にしており,今後リネゾリドとの併用に関してよりリスクの高いセロトニン作動薬が特定される可能性もある。
 リネゾリドとSSRI あるいはSNRI については,これらの薬剤を主に用いる医師の専門性が全く異なり,これらの薬剤間の相互作用について医師が認識していない場合もありうる。SSRI あるいはSNRI を使用していても,患者の状態によってはリネゾリドによる治療が避けられないことも考えられ,そのような場合においては薬物治療を横断的に俯瞰できる薬剤師による患者モニターがより重要になってくると思われる。
 
参考文献
・グットマン・ギルマン薬理書 第10版,廣川書店,2003
・重篤副作用疾患別対応マニュアル 第4集,日本医薬情報センター,2010
・国立医薬品食品衛生研究所 医薬品安全性情報 Vol. 9  No.18(2011/09/01),No.24(2011/11/24)
・ザイボックス錠 添付文書
(都立小児総合医療センター薬剤科 大村由紀子)