そこが知りたい 2012(平成24)年2月号

核医学検査における放射性医薬品の小児投与量について
 
 最近,原子力発電所の事故や,医療機関による放射性医薬品の過量投与事例により,放射性物質による被ばくについての意識が高まっている。医療機関による過量投与事例については,対象患者が小児であったこともあり,関心も集まった。
 小児は成長過程にあるため,代謝やホルモン分泌の面で成人とは異なり,余命が長いことや遺伝的リスクのことも含めて被ばくに関して十分考慮する必要がある。しかし,過少の放射性医薬品の投与のために的確な診断のための画像が得られなければ,無用の被ばくということになる。また,必要以上の投与による過剰被ばくも避けなければならない。
 放射性医薬品の小児の投与量算出についてはいくつか提案があるが,体重当たりの投与量計算では不十分と考えられている。放射性医薬品は臓器への集積を目的としており,小児においては体重当たりの臓器重量が成人に比べ多くなるためである。
 また,核医学検査における検査時間は通常30分程度かかる。検査時は仰向けの姿勢をとり,安静にしていることが必要であるが,小児においては検査中に様々な理由で動いてしまうこともある。撮像は体動の影響を大きく受けるため,良い画像を得るためには検査時間をできるだけ短くすることも考慮する必要がある。
 放射性医薬品の成人に対する投与量は各医薬品の添付文書や日本アイソトープ協会からの「核医学イメージングの規格化に関する勧告(1987年第2次改訂)」が参考となる。小児への投与量は日本アイソトープ協会から1988年に提示された「核医学イメージングのための小児への放射性医薬品投与量に関する勧告」を参考指標とすることとなる。この勧告では,小児投与量の算出について複数の方法が示されているが,その中で計算方法も容易で算出した投与量も検査施行の際に大きな支障をきたさないと思われる算出法として以下の式が示されている。
 
小児投与量=成人投与量×(Y +1)/(Y +7)(Y:年齢)
 
 ただ,年齢についてはあまり細かく分けることは実用性に欠ける恐れがあることを考慮し,この勧告の中では1歳以下,1~3歳,3~5歳,5~10歳,10~15歳の5段階に分けた,年齢別放射性医薬品投与量が示されている。
 この他に,日本核医学会編集の「放射性医薬品の適正使用におけるガイドラインの作成」に一部医薬品における小児投与量の記載がみられるほか,日本心臓核医学会からも心臓核医学検査における小児の投与量の目安が示されている。
 
表:日本心臓核医学会による小児への放射性医薬品投与量の目安
年齢 投与量
1~5 歳 1/4
5~ 10 歳 1/2
10 ~ 15 歳 3/4
15 歳以上 成人と等量
 
 平成23年6月,日本核医学会や日本病院薬剤師会など4団体により,「放射性医薬品取扱いガイドライン」が作成された。このガイドラインは放射性医薬品の適切な院内調製の実施とそれに伴う管理体制に関する事項から構成される。今後,核医学領域における放射性医薬品においても,医薬品の安全管理,安全使用のために薬剤師が積極的に関与していく必要があると思われる。
 
参考文献
・(社)日本アイソトープ協会医学・薬学部会核医学イメージング規格化専門委員会:核医学イメージングのための小児への放射性医薬品投与量に関する勧告,RADIOISOTOPES,37,627-632(1988)
・日本核医学会:放射性医薬品の適正使用におけるガイドラインの作成,核医学,41(2),1-58(2004)
・日本心臓核医学会ホームページ:役立つ情報:核医学検査の安全性(http://www.jsnc.org/jsncseminar/009)
(東京医科大学病院薬剤部 宮澤 祐輝)