そこが知りたい 2012(平成24)年6月号

がん骨転移患者への分子標的薬  ~デノスマブ~
 
 従来,多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変に対し,ビスホスホネート製剤(BP 製剤)が使用されてきた。2011年12月にこれらの骨病変に対しデノスマブ(ランマーク®)が承認され,2012年4月に発売された。がん骨転移に対する本邦初の分子標的薬剤である。
 デノスマブは,RANKL(receptor activator of nuclear factor- κ B ligand)を標的とするヒト型IgG 2モノクローナル抗体製剤である。RANKLとは,破骨細胞及び破骨細胞前駆細胞表面のRANK に結合する破骨細胞の形成,機能,生存に必須のメディエーターである。デノスマブはRANKL を特異的に阻害し,破骨細胞による骨吸収を抑制する。
 骨は,肺や肝とならんで,がんの好発転移臓器の一つであるが,骨転移は耐え難い苦痛,病的骨折,高カルシウム血症や脊髄圧迫症状などの,いわゆるSRE(Skeletal Related Event)を引き起こすため,がん患者の全身状態やQOL は著しく低下し,ADL は損なわれ,自立性の維持が困難となる。
 骨転移を有する進行がん患者では,SRE の発現リスクを低下させることが治療の目標とされており,標準的な治療としてゾレドロン酸が最も汎用されている。そこで,デノスマブのSRE 発現抑制効果をゾレドロン酸と比較検討する3つの第Ⅲ相臨床試験(①乳癌,②前立腺癌,③乳癌,前立腺癌を除く固形癌(肺癌など)又は多発性骨髄腫)が実施された。その結果,SRE の初回発現リスクについてゾレドロン酸に対するデノスマブの優越性または非劣性が証明された。なお,これら3つの第Ⅲ相臨床試験の個々の試験及び併合解析のいずれにおいても,全生存期間,病勢の進行,及び骨における病勢の進行について,デノスマブとゾレドロン酸の両群間で違いは認められない。
 デノスマブは4週に1回の皮下注射であり,時間をかけた静脈点滴や腎機能障害患者における用量調節が不要で,利便性においても優れていることから,日常臨床で使いやすい製剤であるといえる(表)。
 ランマーク®1瓶の薬価は45,155円である。12週間での薬剤コストはゾレドロン酸(3週間間隔)と比較し,著しい差はないが,SRE や原病関連に伴うコストなどを考慮した費用対効果も含めた検討が必要になってくると思われる。 デノスマブにみられる副作用はBP 製剤と同様に顎骨壊死及び低カルシウム血症がある。そのため臨床現場においても,治療開始前に歯科受診をし,定期的に,血清カルシウム,リンなどの血清電解質濃度を測定する必要がある。また3つの第Ⅲ相試験では,高カルシウム血症の発現が確認されない限り,毎日の補充療法として,500mg 以上のカルシウム剤及び400IU 以上のビタミンD剤の服用を強く推奨していた。そのため必要に応じて,カルシウム剤及びビタミンD剤を補充し,低カルシウム血症を是正する必要がある。RANKL阻害という新しい作用機序をもつ生物学的製剤デノスマブの登場で,がん骨転移治療が容易かつ効果的となり,より一層QOLの改善に貢献することが期待される
 
表 デノスマブとゾレドロン酸の比較
  デノスマブ ゾレドロン酸
分類

ヒト型IgG 2

モノクローナル抗体製剤

ビスホスホネート製剤
投与経路 皮下投与 静脈点滴

多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌

骨転移による骨病変に対する用法

4週間に1回 3~4週間に1回
腎障害時の用量調節 必要なし 必要あり
貯法 2~8℃ 室温
薬価 45,155円 32,254円
 
参考文献
1) 急性膵炎診療ガイドライン2010年版
2)B.joseph Elmunzer,et al. A Randomized Trial of Rectal Indomethacin to Prevent Post-ERCP Pancreatitis. N Engl J Med 2012;366;1414-22
(日本大学医学部附属板橋病院薬剤部 榎本麻衣子,木村 高久)