そこが知りたい 2012(平成24)年8月号

感染症と就業制限
 
 現在,風しんの患者数が増加しており,2011年は全数報告疾患となった2008年以降では最も多い年間報告数(374例。2012年4月18日現在)となった。さらに2012年第1~15週(1月2日~4月15日)の累積報告数は122例であり,これは2011年の同時期の累積報告数(67例)と比較して約2倍となっている。また小児だけでなく,成人の患者も多く報告されているため,今後も注意する必要がある。児童・生徒が風しんに罹患した際は,その症状である発疹が消失するまでの期間,幼稚園・学校は出席停止となる。では,社会人の場合はどうであろうか。
 感染症に関する規定として,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)が定められている。感染症法は,感染力や罹患した場合の重篤性等に基づき感染症を分類指定し,対応措置を規定している。現在の分類は,1類から5類と新型インフルエンザ等感染症である(表1)。そのうち1類から4類のすべてと5類の一部の感染症は,患者が発生した際には診断した医師が保健所に届出を提出することが定められている。風しんは届出の必要な5類の感染症である。
 就業制限については,感染症の病原体を保有している者が就業を通じて当該感染症を他者に蔓延させるのを防ぐ為であり,感染症の病原体を保有しなくなるまでの期間が就業制限の期間となる。感染症法においては感染症の分類等により,制限の期間だけでなく,飲食物の製造販売業や接客業などの不特定多数と接触する業種等,制限される業種が定められている。
 企業においては,従業員が感染の危険性の高い感染症に罹患した場合は感染症法および労働安全衛生規則に照らし合わせ,出勤停止等の就業制限を実施することとなる。感染症法における就業制限は上記のとおりであるが,労働安全衛生規則では,「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者」は事業者が就業を禁止しなければならない,とされている。ただし,具体的な感染症は提示されていない。
 また,学校等においては学校保健安全法施行規則により,学校感染症が第1種から第3種まで分類されており,感染症の種類,症状により出席停止期間等が定められている(表2)。感染症としては,感染症法における1類から3類の他,流行性角結膜炎,感染性胃腸炎等がある。
 児童・生徒が感染性胃腸炎やインフルエンザ等の5類感染症に罹患した場合,医師の診断書により公休となる。ただし,社会人が同様の感染症に罹患した場合は,各企業等における就業規則によるので,事業主への確認や産業医等の意見を聞く等の対応が必要となる。
 
表1 感染症法による感染症の分類
1類
エボラ出血熱,クリミア・コンゴ出血熱,痘そう,南米出血熱,ペスト,マールブルグ病,ラッサ熱
2類
急性灰白髄炎,結核,ジフテリア,重症急性呼吸器症候群,鳥インフルエンザ
3類 コレラ,細菌性赤痢,腸管出血性大腸菌感染症,腸チフス,パラチフス
4類 42種の感染症
5類 42種の感染症
6類 新型インフルエンザ,再興型インフルエンザ
 
表2 学校感染症
第1種
エボラ出血熱,痘そう,クリミア・コンゴ出血熱,ペスト,マールブルグ病,南米出血熱,ジフテリア,ラッサ熱,急性灰白髄炎,重症急性呼吸器症候群,鳥インフルエンザ(上記の他に感染症法に規定する新型インフルエンザ等感染症,指定感染症および新感染症が該当する)
第2種
インフルエンザ,百日咳,麻しん,流行性耳下腺炎,風しん,水痘,咽頭結膜熱,結核,髄膜炎菌性髄膜炎
第3種
コレラ,細菌性赤痢,腸管出血性大腸菌感染症,腸チフス,パラチフス,流行性角結膜炎,急性出血性結膜炎,その他感染症(条件により出席停止等の措置が必要と考えられる感染症として,溶連菌感染症,ウイルス性肝炎,感染性胃腸炎,ヘルパンギーナ,伝染性紅斑,手足口病,マイコプラズマ感染症,等がある)
 
参考資料
・国立感染症研究所感染症情報センターホームページ(http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-idsc.html),2012年6月21日アクセス
・電子政府の総合窓口イーガブ(http://www.e-gov.go.jp/)内,法令検索ページ,2012年6月21日アクセス
(東京医科大学病院薬剤部 宮澤 祐輝)