そこが知りたい 2012(平成24)年12月号

更年期障害に対するHRTの外用薬について
 
 閉経前後の5年間,計約10年間を更年期といい,この期間に現れる卵巣機能低下によるエストロゲンの欠乏,特にエストラジオール欠乏に基づくほてりやのぼせ(Hot flush),発汗,頭痛,抑うつ気分,不眠などを更年期症状と呼ぶ。これらの症状は多岐にわたり,このうち日常生活に支障をきたすような病態を更年期障害と定義している。更年期症状は,簡略更年期指数(表1)などを用いて評価し,器質的な変化に起因した類似症状と鑑別しなくてはならない。 更年期障害の改善には,ホルモン補充療法(Hormone Replacement therapy:HRT) によるエストロゲンの補充が根本的な治療として有効であるとされる。 更年期障害に対するHRT 治療薬として経口薬,注射薬,外用薬といろいろな剤形がある。この中で外用薬(表2)は,末梢血管から直接吸収されるため肝初回通過効果を受けず,そのため安定した血中濃度が得られる。胃腸障害や肝障害を生じにくく,血中TG 上昇を抑制し,脂質異常症ならびに血栓症のリスクを抑える。また,HRT の有害事象のひとつとされる乳がんのリスクを経口HRT と比較して軽減したとの報告もある。なお,HRT 実施にあたり禁忌症例(表3)に注意したい。
 HRT 普及率は欧米で30~40%であるのに対し,日本では2~3%と非常に低い。日本女性医学学会は,10月18日の世界メノポーズ*デー(更年期の健康に関わる情報を全世界へ提供する日)に合わせ,毎年10月18日から24日までの1週間を「メノポーズ週間」として啓蒙活動をしている。また,2009年のHRT ガイドラインに続き,その改訂版が本年9月に刊行された。HRT の普及と,薬をより安全に用いて患者のQOL が改善されることを期待したい。
*メノポーズ(Menopause):更年期,閉経
 
表1. 簡略更年期指数
 症状の程度に応じ,自分で○印をつけてから点数を入れ,その合計点をもとにチェックします。
どれか1つの症状でも強く出ていれば,強に○をしてください。
症状 点数
① 顔がほてる 10 6 3 0  
② 汗をかきやすい 10 6 3 0  
③ 腰や手足が冷えやすい 14 9 5 0  
④ 息切れ,動悸がする 12 8 4 0  
⑤ 寝つきが悪い,または眠りが浅い 14 9 5 0  
⑥ 怒りやすく,すぐイライラする 12 8 4 0  
⑦ くよくよしたり,憂うつになることがある 7 5 3 0  
⑧ 頭痛,めまい,吐き気がよくある 7 5 3 0  
⑨ 疲れやすい 7 4 2 0  
⑩ 肩こり,腰痛,手足の痛みがある 7 5 3 0  
合計点          
更年期指数の自己採点の評価法
0~25点 : 上手に更年期を過ごしています。これまでの生活態度を続けていいでしょう。
26~50点 : 食事,運動などに注意を払い,生活様式などにも無理をしないようにしましょう。
51~65点 : 医師の診察を受け,生活指導,カウンセリング,薬物療法を受けた方がいいでしょう。
66~80点 : 長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。
81~100点 : 各科の精密検査を受け,更年期障害のみである場合は,専門医での長期的な対応が必要でしょう。
 
 
表2. 更年期障害に対するHRT の外用薬
薬剤名 一般名 規格 剤形 用量 使用部位
卵胞ホルモン
製剤
エストラーナ
エストラジオール
0.72mg,
9cm2,1枚
テープ 1枚/2日
下腹部,
臀部
ル・エストロ
ジェル*
エストラジオール
0.06% (0.54mg,
1プッシュ)
ゲル 2プッシュ/日
両腕
(手首~肩)
ディビゲル
エストラジオール
1mg,1包 ゲル 1包/ 日
左右いずれか
の大腿部・下
腹部
卵胞ホルモ
ン・黄体ホル
モン 配合剤
メノエイド
エストラジオール/酢酸ノルエチステロン
0.62mg/2.70mg,
9cm2,1枚
コンビパッチ
1枚/3~4
日(週2回)
下腹部

*ル・エストロジェルは,2007年8月本邦において販売が開始され薬価未収載品として使用されてきた

が,2012年5月に薬価収載となった。
 
 
表3. HRT 禁忌
・エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば乳がん,子宮内膜がん)およびその疑いがある患者
・乳がんの既往歴のある患者
・未治療の子宮内膜増殖症のある患者
・血栓性静脈炎や肺塞栓症のある患者,またはその既往歴がある患者
・動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)またはその既往歴のある患者
・使用薬剤の成分に対して過敏症の既往歴がある患者
・妊婦または妊娠している可能性がある女性および授乳婦
・重篤な肝障害のある患者
・診断の確定していない異常性器出血のある患者
・ポルフィリン症で急性発作の既往歴のある患者
 
参考文献
・佐久本哲郎:更年期障害の診断と治療,沖縄医報,47,205-208(2011)
・岩石真紗子:わが国におけるHRT の普及の遅れと政策提言の必要性,更年期と加齢のヘルスケア,6,14-25(2007)
(日経BP 社診療所 佐藤 仁美)