そこが知りたい 2016(平成28)年7月号

再生医療等製品について

 近年,iPS 細胞や ES 細胞等による再生医療が革新的な医療として実用化に向けて進行している一方で,安全面の問題や人の細胞等を用いることから原料の個人差などにより品質が不均一となる可能性があるなどの課題が存在することが指摘されている。そのため再生医療等に使用される製品については,安全性を確保しつつ,迅速な実用化が図られるよう,その特性を踏まえた制度等を設けることが必要となった。これを踏まえ,2014年11月25日に「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下,医薬品医療機器等法)」が施行される際に,医薬品や医療機器とは別に「再生医療等 製品」が新たに定義された。

 再生医療等製品は,「人の細胞に培養等の加工を施したものであって,身体の構造・機能の再建・修復・形成するもの,疾病の治療・予防を目的として使用するもの」又は「遺伝子治療を目的として,人の細胞に導入して使用するもの」と定義される。具体的には,自家軟骨細胞や自家皮膚細胞による組織再建製品,免疫細胞を活性化する物質及び癌抗原ペプチドを含む細胞により,癌免疫機能を増強させることで,癌治療効果を期待する癌免疫製品およびウイルスに先天的に欠損した遺伝子を保持させ,患者に投与した後に,導入遺伝子が発現することで,遺伝性疾患の治療効果を期待する遺伝性疾患治療製品などが挙げられる。

 本邦では医薬品医療機器等法が施行されるまでの間,再生医療等に使用される製品として「重症熱傷に対する自家培養表皮:ジェイス」および「膝関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨:ジャック」の2製品が医療機器(生物由来製品)として承認を受け,臨床の場で使用されてきたが,医薬品医療機器等法の施行と共に再生医療等製品へと移行された。そして,2015年9月にはさらに2製品が再生医療等製品として製造承認を取得した。1つは薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な虚血性心疾患による重症心不全の治療を適応症とするヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」で,保健医療材料の扱いとして保健償還価格が設定された(1治療で約1470万円)。

 もう1つは移植片対宿主病(急性GVHD)を適応症とする他家由来のヒト間葉系幹細胞(MSC)を利用した「テムセル HS 注」で,こちらは医薬品扱いとなり薬価基準に収載された(868,680円/1バッグ)。この製品は,健康な成人から採取した骨髄液から分離し,拡大培養した MSC を静脈内に投与し,その細胞自体が有する免疫調節作用を利用する。また,他家細胞であるにもかかわらず MSC 自体の免疫原性が弱いため,通常の医薬品と同様に,組織型等を合わせる事なく,必要とされる患者に広 く投与できるという利点があり,急性 GVHD の治療における新たな選択肢となることが期待されている。ちなみに再生医療等製品の使用に当たっては,特定生物由来製品と同様に厳密な管理が必要であり,再生医療等製品名(販売名),その製造番号又は製造記号(ロット番号),使用年月日,使用した患者の氏名及び住所等を記録し,少なくとも20年間保存することが義務付けられている。

 その他現在治験中の再生医療等製品としては,「固形癌に対する MAGE-A4抗原特異的 TCR 遺伝子導入リンパ球(がん免疫療法の一類型)」などがあり,今後も市場が拡大していくことが予想される。しかし再生医療等製品は医薬品でも医療機器でもない新しいカテゴリーの製品のため,まだ院内での取り扱いを模索中の施設もある。前述の自己培養表皮や軟骨のように手術中に使用する医療機器のような製品もあれば通常の注射薬のように点滴静注する製品もあることから,薬剤師も製品ごとの特性を理解し,適正に使用および管理できるようにしたい。

参考文献

・厚生労働省医薬食品局発表資料「改正薬事法における再生医療等製品の承認審査について」(中医協 総 -3-1 26.10.8)

・JCR ファーマ株式会社 ホームページ ・テルモ株式会社 ホームページ ・テムセル HS 注 添付文書(2015年9月作成(第1版))

(日本大学医学部附属板橋病院 佐々木祐樹)