そこが知りたい 2018(平成30)年1月号

ヒアリについて知っておくべきこと

 「殺人毒アリ」「家畜を食い殺す」などセンセーショナルな見出しとともに報道される強毒アリ「ヒアリ」が国内で初確認された。平成29年5月に兵庫県尼崎市で,同6月に神戸市で発見されたのを受け厚労省は「ヒアリに刺された場合の留意事故について」事務連絡を発出し医療関係者に対して注意を促した。平成29年10月6日現在までに全21事例,11都府県で確認されている。

 ヒアリ(学名:Solenopsis invicta)は中南米原産で体長は2.5~6mmと大きさにバラツキがあり,体色は赤茶色で腹部は濃く黒っぽい赤色をしている(図)。毒針を持ち,非常に攻撃性が強く,毒性も強い。刺されると火傷のような激しい痛みが生じることから,漢字で「火蟻」とも表される。農耕地や公園などに巣(アリ塚)を作る習性があり,北米や中国,フィリピン,台湾などにも外来生物として侵入・定着していることが確認されている。

 ヒアリに刺された場合の症状の程度はハチ毒へのIgE抗体の有無などにより大きく異なり,局所反応から全身反応(アナフィラキシー)にまで至る(表)。

 ヒアリに刺された場合の処置は抗ヒスタミン剤を中心に必要に応じてステロイド剤を使用する。重度のアナフィラキシーに対してはスズメバチなど他の 虫刺症によるものと変わらず,日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインに沿って対応を行う。またヒアリの毒にはアルカロイド毒であるソレノプシン(2-メチル-6-アルキルピペリディン)のほか,ハチ毒との共通成分であるホスホリパーゼやヒアルロニダーゼなどが含まれている。そのためヒアリに刺された経験がなくてもハチ毒アレルギーを持つ方はヒアリ毒と交叉反応を起こし,アナフィラ キシーショックを発生する可能性があるので注意したい。アナフィラキシーショックはヒアリ咬傷の2~7%に現れ,ヒアリの定着した南カリフォルニアでは人口1万人当たり1.9人がアナフィラキシーで治療を受けたとされている。

 今後,日本国内に定着してしまうのか懸念をもって注目されているが,早期発見・早期駆除を目指した対策が必要になってくる。目下のところ,環境省はヒアリを疑うアリを見かけたら自分で駆除せずに,環境省ヒアリ相談ダイヤル(0570-046-110)か都道府県の環境部局に連絡するよう呼びかけている。

 本稿が活字になる頃にはヒアリの駆除が完了し,拡散・定着が阻止されていることを願いたい。

 

参考資料

・環境省:ヒアリに関する諸情報について

  <http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/fireant.html>(2017年10月6日現在)

・環境省:ストップ・ザ・ヒアリ

・勝田吉彰:ヒアリの上陸に備えて医師が知っておきた い基礎知識.日本医事新報No.4866,(2017.7.29)

(日本赤十字社医療センター薬剤部 田尻優吏亜)