そこが知りたい 2018(平成30)年3月号

服薬管理の新時代 ~服薬アドヒアランス向上を目指して~

 医師が処方した薬を患者が指示通りに服用することは薬物治療を行う上で非常に重要である。従来のお薬手帳に加え,近年ではスマートフォンやタブレット端末の普及を背景にIoT(Internet of Things)を活用して服薬管理を行うツールが数多く登場してきている。しかし,そのような服薬管理ツールを用いても処方された薬を患者が実際どれだけ服用しているかを正確に把握することは困難であった。

 2017年11月新たな服薬管理ツールが世界で初めてアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認された。わずか3mm程度の極小センサーを薬に内蔵し,服薬管理を可能とするdigital medicine AbilifyMyCite®である。本剤は統合失調症などの治療薬であり,摂取可能な極小センサーが組み込まれている。このセンサーは胃液に接するとシグナルを発し, 患者の身体に貼り付けたシグナル検出器(MycitePatch)により服用の日時が記録される。不要となったセンサーは体内で消化・吸収されることなく安全に体外へ排泄される。またこのシグナル検出器は,専用のアプリから患者の服薬データだけでなく,活動状況の確認なども入力することができる。これらのデータはスマートフォンなどのモバイル端末に転送され,患者の同意があれば医療従事者や介護者との情報共有も可能となる。

 この新たな服薬管理ツールは患者の服薬アドヒアランス向上に寄与すると期待される。世界保健機関(WHO)は慢性疾患におけるアドヒアランスの低下は治療効果の低下や医療費の増大を招く重要な問題であるとしている。特に統合失調症などの精神疾患患者では約6割が服薬不良との報告もあり,早急な改善策が必要とされている。センサーを内蔵した服 薬支援デバイスは従来の機能にはなく,患者の服薬状況,活動状況を医師やその他医療従事者が明確に把握することが可能となる。これにより患者や患者を取り巻くスタッフとの連携・コミュニケーションが促進され,アドヒアランス改善にむけた患者個々に適した治療を選択できることが期待されている。

 しかし普及にあたっての問題点もある。患者が医師やその他の医療従事者などから常に監視されていると感じてしまう面や,治療意識の上がらない患者に対しては不信感が生まれてしまう可能性があるなど,今後十分に議論していく必要がある。

 服薬アドヒアランスの向上を目指すため,情報通信技術の進化は改善策の一つとして注目されている。現段階では様々な問題点もあるが,改善を重ねていくことで次世代の服薬管理支援ツールとして今後さまざまな医薬品への普及,さらには日本への展開も興味がもたれる話題である。

 

参考資料

・大塚製薬ホームページ

・薬局 Vol.68,No.10,118-123.2017 ICTを活用した治療継続率・服薬遵守率向上に向けた取り組み

(日本大学医学部附属板橋病院 関本 真雄,木村 高久)