そこが知りたい 2018(平成30)年7月号

医療用麻薬の乱用防止対策の重要性について

 現在,医療用麻薬は従来から使用されているがん性疼痛のみならず,非がん性疼痛に対しても適応が拡大されて疼痛に苦しむ患者のQOL向上に寄与している。そして,高齢化社会に向けた対策として地 域包括ケアシステムの構築を基本とした在宅医療の推進などの社会的背景に伴い,将来的に医療用麻薬 の利用拡大が見込まれている。このような現状と, 海外,特に米国における医療用麻薬の乱用問題を踏 まえ,厚生労働省は2018年3月29日,二課長通知(薬生薬審発0329第23号,薬生監麻発0329第2号)「医療用麻薬の乱用防止製剤について」の通達がなされた。その内容は,医療用麻薬の乱用を本邦において未然に防ぐ対策として,乱用防止対策の重要性,乱用を防止するための特性を有する製剤の意義を唱え,医療機関・薬局においてはその使用に向けた検討を行うこと,医薬品製造販売業者においては乱用防止製剤への開発・改良の検討を行うことへの周知文となっている。

 2017年12月に発売したオキシコンチンTR®錠は容易に砕けない硬度と,水を含むとゲル化する特性を持つことにより,乱用目的での粉砕,水溶化による薬物の抽出を困難にさせ,注射による静脈内投与を防止している。米国における乱用防止製剤の特性 としても前述同様に物理的抵抗性(かみ砕き,押し潰し,切断,粉砕の防止),化学的抵抗性(ゲル化等により水等の溶媒による麻薬成分の抽出防止),または有効成分に対する拮抗成分の配合(多幸感など乱用の目的となる効果を妨げ,減少し,打ち消すもの)による製剤が承認されている。このような製剤が開発された背景には,アメリカ薬物乱用精神衛生局(Substance Abuse and Mental Health Services Administration,以下SAMHSA)のレポー トによると,1990年代後半から容易に破砕可能で あったオキシコドン徐放錠や,水に溶かして成分の抽出が可能なフェンタニルパッチなどの上市と重なり医療目的外の鎮痛薬の使用が急増したことが要因の1つとして挙げられる。

 乱用防止対策として使用する患者・家族への麻薬管理についての指導も重要になる。SAMHSAによる2012年の調査ではオピオイド鎮痛薬の入手経路は,売人やインターネットの購入よりも,家族や友人から無償または有償で入手するケースが7割を占めていたことが分かった。厚生労働省が2017年4月に改 訂した「医療用麻薬適正使用ガイダンス」においても患者・家族への指導内容(表1)を記しており,薬剤師として服薬指導の際には,これらの内容にも留意されたい。そして,本稿中で米国における医療用麻薬を取り巻く現状をいくつか記したが,米国と本邦では医療用麻薬の管理体制の違いや,処方消費量が世界的に多い米国と,その逆である本邦の違いがある。医療用麻薬の乱用防止を過度に心配するあ まり,必要とされる患者に行き届かないようなこと がないよう,医療側の配慮が重要である。

 

参考資料

・厚生労働省ホームページ:医療用麻薬適正使用ガイダ ンス 平成29年4月版  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/other/iryo_tekisei_guide.html

・厚生労働省,薬生薬審発0329第23号,薬生監麻発0329 第2号:医療用麻薬の乱用防止製剤について

・Substance Abuse and Mental Health Services Administration:Result from the 2012. National Survey on Drug Use and Health, p29-30.

(順天堂東京江東高齢者医療センター薬剤科 高野 賢児)