そこが知りたい 2018(平成30)年9月号

小児けいれん重積治療 ガイドラインについて

 2018年3月,医療情報サービス(Minds)は,日本小児神経学会の「小児けいれん重積治療ガイドライン2017」をオンラインで無料公開した。これは「小児のけいれん重積状態の診断・治療ガイドライン」,と「てんかん治療ガイドライン2010」を基に新たに作成された指針である。

 治療の目標は,けいれん発症からできるだけ早く,かつ安全に発作を収束させることである。このガイドラインは,おおむね生後1ヵ月以降20歳未満の年 齢における,てんかん重積状態(statusepilepticus:SE)のなかの,けいれん性てんかん重積状態 (convulsivestatusepilepticus:CSE)を対象としている。疫学や海外ガイドラインの解説等をまとめ た総論と,clinicalquestion(CQ)形式の各論で構成され,臨床現場での速やかな方針決定に寄与できるよう作成されている。

 各論のCQは15項目あり,各CQに対処法及び推奨グレードが示してある。一般的に推奨グレードは,科学的根拠の強さを基準に決定される。例えばAmericanEpilepsySociety 作成のガイドラインGlauser(2016)では,前方視的ランダム化比較試 験をクラス1または2,その他の比較試験をクラス 3,症例シリーズなどはクラス4と設定,「結論と推奨」では推奨レベルAはクラス1,レベルBは クラス2,レベルCはクラス3以上の研究を必要とし,クラス4の研究のみの場合,レベルUとして「推奨なし」としている。しかし,このガイドラインではエビデンス総体の強さだけで判断するのではなく,日本の実臨床に適用できることを重視してグレードが判断されている。理由として,後方視的研究や症例研究が多いこと,エビデンスレベルが高い研究報告でも,日本には導入されていない薬剤や剤形(例:ロラゼパム静注:レベルA,ミダゾラム粘膜投与製剤:レベルB)が多いことが挙げられ る。日本で使用できる薬剤はジアゼパム静注,フェノバルビタール静注がレベルAとなるが,ホスフェニトインはレベルUに相当してしまい,推奨グレードシステムを採用すると多くのCQで推奨グレード がつけられなくなる。  

  SEの治療にあたる医療機関は一般病院や診療所,第三次救急医療機関と幅広く,設備やスタッフの状況が大きく異なる。また,症状の発症の原因や患者個々の背景が多様であるため,治療に対する反応も一定しない。また,SEに適応のある薬剤は限られており,早期治療や難治化した際には適応外での使用を必要とする場合もある。SEの治療方法の画一化は難しく,実際の治療は,医療環境や倫理的配慮等を勘案する必要がある。適応外使用の選択の際には患者の状態,他の選択可能な治療法とその期待される効果,想定される有害事象等について,患者家 族等に対して適切にインフォームドコンセントを得る努力が求められる。

 ガイドラインは策定されたが,その基礎となる臨床的知見は乏しいのが実情のため,今後,共通の考え方に基づく臨床経験の蓄積と新たな知見の集積が期待される。

参考資料

1)日本小児神経学会監,小児けいれん重積治療ガイドライン策定ワーキンググループ編:“小児けいれん重積治 療ガイドライン2017”,診断と治療社,東京,2017

(東京医科大学病院薬剤部 宮澤 祐輝)