そこが知りたい 2019(平成31)年3月号

CAR-T療法について

 キメラ抗原受容体T 細胞(Chimeric Antigen Receptor-T cell:以下CAR-T)療法とはT細胞のがんに対して高い有効性を有する免疫療法である。 患者よりT細胞を採取した後,遺伝子改変技術を用いて白血病細胞表面のCD19を特異的に認識するキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:以下CAR)をT細胞へ導入する。CARが導入されたT細胞はCAR-T細胞と定義され,CAR-Tを培養・増殖させた後に再び患者の体内に戻す治療法となっている。CAR-T細胞が体内に定着することでCD19を発現した白血病細胞に対する監視・攻撃を高めることが可能となり,1回の投与で治療が完了するのが特徴である。免疫チェックポイント阻害 薬に続くがん免疫療法として期待されている。

 国内初となるCAR-T療法キムリア®が「小児を含む25歳以下のCD19陽性再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病」,「成人のCD19陽性再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」の2つの適応で承認申請中である。従来用いられた救援化 学療法や造血幹細胞移植と比べ,高い治療効果の他,高額薬剤に対する扱いについて注目されている。   

 キムリア®の臨床試験である25歳以下の再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病患者75名を対象とした国際共同第Ⅱ相試験(ELIANA)では,主要評価項目である3ヵ月以内の完全寛解率は81%と報告されている。寛解が得られた患者全例で微小残存病変が認められず,6ヵ月時点での生存率は76%,全生存期間中央値は19.1ヵ月であった。関連が疑われたGrade3-4の有害事象は73%の患者に発現を認めた。サイトカイン放出症候群の発現率は77%で,うち48%がトシリズマブで治癒,神経学的イベントの発現率は40%であったが支持療法にて脳浮腫は報告されなかった。より長期での有効性や安全性については,今後の報告が期待される。

 米国では2017年に世界初のCAR-T細胞療法として承認され,2018年には欧州でも承認を取得している。米国では1回の投与で約5000万円超の価格がつく高額薬剤である。高額となる理由としてCAR-T 療法薬の材料は患者自身の血液であり,製造管理,品質管理のコストが掛かること等が挙げられる。国内においても保険収載の方法について議論がなされ ている。医療保険財政に与える影響から治療反応時のみ支払いを求める成功報酬型の支払い方式が検討されるなど協議が続いており,医療経済における観点からも注目される。

参考資料

1)N Engl J Med. 2018 Feb 1; 378(5): 439-448.

2)第114回社会保障審議会医療保険部会 議事次第-厚生 労働省

(日本大学医学部附属板橋病院薬剤部 鈴木 慎一郎,木村 高久)