そこが知りたい 2019(令和元)年7月号

バイオセイムの登場で変わるバイオシミラー市場

 今日の医療においてバイオテクノロジー応用医薬品(バイオ医薬品)は欠かすことのできない重要な医薬品として位置づけられているが,バイオ医薬品の後続品であるバイオシミラー(以下,BS)の品目数も年々増加している。

 BS は,国内で既に新有効成分含有医薬品として承認された先行バイオ医薬品と同等/同質の品質,安全性及び有効性を有する医薬品として,異なる製造販売業者により開発される医薬品と定義される。バイオ医薬品は有効成分がタンパク質由来や生物由来の物質により産生されるため,化学合成の低分子医薬品に比べて分子が大きく,構造も複雑で,その特性や性質は一般に製造工程そのものに依存する。そのため先行バイオ医薬品と同一性を示すのは困難であり,先行バイオ医薬品との同等性/同質性が示されればBS として承認される。2009年に承認されたソマトロピンを皮切りにBS の普及も進み,様々な疾患で広く使用されるようになった。

 そして2018年8月に国内初となるバイオ医薬品のオーソライズドジェネリックとしてダルベポエチンアルファ注シリンジ「KKF」(協和キリンフロンティア)が製造承認された。このバイオ医薬品はバイオセイム(オーソライズドバイオシミラー;以下,ABS)と呼ばれ,有効成分や製法などが先行バイオ医薬品と同一であり,BS とは一線を画している。

BS を使用する医師や薬剤師は先行バイオ医薬品との同質性/同等性を気にしているという報告があるが,ABS は先行バイオ医薬品と有効成分等が同一であることから,先行バイオ医薬品からBS へ切り替える際の懸念はなくなると考えられている。

 また2019年3月に厚生労働省は暫定的な措置として,ABS の新規収載時の薬価算定はBS と同じ先行バイオ医薬品の7割と定めた。現在のBS の薬価も先行バイオ医薬品の7割だが,薬価においてもABS の登場でこれまでのBS の優位が揺らぐことになりかねず,今後BS を製造する製薬会社は難しい選択を迫られることになるかもしれない。一般に化学合成の低分子医薬品と比べ,バイオ医薬品の製造には莫大な設備投資や製造コストがかかる上,非臨床試験,臨床試験の実施やRMP の策定,製造販売後調査の実施などほぼ新薬同様の体制が必要となるため,採算が合わないとして,新たにBS に参入する製薬会社の減少や他の先行バイオ医薬品のBS開発の停滞につながる可能性がある。

 医療費が年々増加する日本において,医療費削減のため国を挙げてジェネリック医薬品やBS への積極的な切り替えが推進されているが,ABS の登場でどのように変わっていくか,その動向を注視したい。

 

参考資料

・協和発酵キリン株式会社HP(http://www.kyowakirin.co.jp/index.html

・厚生労働省 バイオ医薬品・バイオシミラー講習会資料

 (http://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496080.pdf

(東京大学保健・健康推進本部 本郷地区 梅澤  俊介)