そこが知りたい2019(令和元)年11月号

腎機能障害患者に使いやすくなった

 厚生労働省は2019年6月,メトホルミン含有製剤の使用上の注意改訂を指示する通知を発出した。主な改訂内容は従来から禁忌としていた腎機能障害を「重度の腎機能障害(eGFR30mL/min/1.73 ㎡ 未満)」にするといった条件の見直しや,用法・用量に関連する使用上の注意の新設などである。腎機能障害の禁忌については,これまではどのメトホルミン含有製剤も軽度または中等度以上で禁忌とされていた。

 メトホルミンは腎排泄型の薬剤であり,腎機能障害患者ではメトホルミンの排泄が遅延し血中濃度が上昇することから,乳酸アシドーシスのリスクが高まることが懸念されている。海外において,ビグアナイド系薬剤であるフェンホルミンによる重篤な乳酸アシドーシスの副作用が報告されて以来,同じくビグアナイド系薬剤であるメトホルミンの乳酸アシドーシスに関連する注意が喚起されており,腎機能障害患者においては使用が制限されていた。

 今回改訂に至った経緯には腎機能障害患者におけるメトホルミンの安全性に関する最新の科学的知見に基づき海外の添付文書が改訂されたことを鑑み,国内においても調査および添付文書改訂の必要性の検討を行った。その結果,以下の理由等から改訂することが適切と判断された。

・国内外の複数の診療ガイドライン等において,中等度までの腎機能障害へのメトホルミンの投与は可能とされていること。

・海外の臨床薬物動態試験において,減量により中等度腎機能障害患者におけるメトホルミンの血中濃度を腎機能正常者と同程度に低減可能であること。

・国内の乳酸アシドーシスの重篤副作用報告347例のうち,中等度の腎機能障害患者(eGFR30~60mL/min/1.73㎡)43例の大半は腎機能以外のリスク因子(脱水,心血管系疾患等)が認められていること。

 また今回,重篤な乳酸アシドーシスを起こすリスクを考慮して禁忌の項に「経口摂取が困難な患者等」を,既に禁忌に記載されている「過度のアルコール摂取」を併用禁忌の項にも追記した。用法・用量においては中等度の腎機能障害患者における1日最高投与量の目安を新設した(表)。ただし,1日最高投与量の目安を記載することで当該1日最高投与量を選択しなければならないという誤解を生じさせないよう留意すると同時に,これまで通り腎機能障害の程度に関わらず少量より投与を開始し,個々の患者の状態に応じた用量を調節する旨の注意をより一層徹底する必要がある。

 なお,詳しい内容については「クローズアップDI」をご参照ください。

参考資料

・厚生労働省:令和元年度第3回安全対策調査会 資料1-2 医薬品などの安全性に係る調査結果報告書)

(日本赤十字社医療センター薬剤部 田尻 優吏亜)