そこが知りたい2019(令和元)年11月号

GLP-1メディカルダイエットとは?~リラグルチドを中心として~

 インクレチンホルモンの1つであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1:glucagon like peptide-1)は,グルコース濃度依存的に膵β細胞からインスリンを分泌させることで血糖降下作用を示し,高血糖時における過度のグルカゴン分泌抑制作用を有するため,そのアナログ製剤がGLP-1受容体作動薬として糖尿病治療において臨床応用されている。そして,これらの血糖に対する作用のみならず,迷走神経求心路を介して視床下部の摂食中枢に作用することで食欲を抑制する。また,胃内容物の排出遅延作用も有し,食事中に満腹感が現れやすくなり,食間の空腹感を抑えることで,食事量を減らすことができ,結果的に体重減少につながるホルモンと考えられている。

 実際に,GLP-1アナログ製剤の1つとして上市されているビクトーザ皮下注(リラグルチド)の国内第Ⅲ相試験では,投与開始24週後までの体重の変化量は,リラグルチド単独投与群において-0.92kgであった。また,海外で過体重または肥満(BMI≧27.0) の2 型糖尿病患者に対して行われたSCALE Diabetes 試験では,リラグルチド3.0mg/日投与群,1.8mg/ 日投与群,プラセボ群で,56週時点におけるベースラインからの体重減少は,3.0mg 群で6.0%(6.4kg),1.8mg 群で4.7%(5.0kg),プラセボ群で2.0%(2.2kg)であった。

 このように,リラグルチドの体重減少作用は臨床的にも実証されており,実際に,米国では2014年に体重管理治療薬としてリラグルチド注射剤(商品名:Saxenda)が承認されている。その適応は,成人におけるBMI が30以上(肥満)もしくは27以上(過体重)で,高血圧,2型糖尿病もしくは高コレステロール血症の少なくとも1つ以上の体重関連疾患をもっている患者に対する,運動療法および食事療法の慢性体重管理における補充療法であり,あくまでも補助的な位置づけである。

 近年,このGLP-1製剤を用いたダイエット法が「GLP-1メディカルダイエット」と称され,各メディアにおいて海外で人気のダイエット法であると紹介され注目を集めている。実際に,インターネットの検索サイトで「GLP-1メディカルダイエット」と検索すると,複数のクリニックの広告サイトが確認でき,“楽に痩せられる注射”,“辛い運動や食事制限などがない”,“アメリカ・ヨーロッパで承認されている”などのフレーズがみられる。

 これらの中には,糖尿病専門医により有効性および安全性が詳細に記載されたサイトもあれば,安全性に関する記載がまったくないサイトも見受けられる。GLP-1製剤の重大な副作用には,低血糖,膵炎,腸閉塞などがあり,特に導入初期には,胃腸障害の頻度が高く,徐々に増量する必要があるため,適切な指導の下で使用されることが望まれる。また,基本的には保険外診療ではあるものの,医師の診察に基づき薬剤が交付されるが,一部では個人輸入で入手し使用する例や,注射剤を複数人で使い回す等の報告があり,適正に使用されていない実態もあるため,非常に危険である。

 実際に,薬剤師が糖尿病治療においてGLP-1製剤を導入する患者へ作用機序を説明する際に,「あの痩せるホルモンですよね」と質問されるケースもあり,医薬品を用いたダイエット法については,薬剤師も幅広く情報を収集する必要がある。

 

参考資料

・ビクトーザ® 皮下注18mg 添付文書

・Saxenda®Medication Guide(September 2016, Ver.2)

・Davies MJ, et al. Efficacy of liraglutide for weight lossamong patients with type2   diabetes. The SCALE diabetes randomized clinical trial. JAMA. 2015; 314:687-99.

(日本大学病院 薬剤部 佐々木 祐樹)