そこが知りたい2020(令和2)年1月号

1 型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬使用の注意

 SGLT2阻害薬は,血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を下げる新規作用機序を持つ2 型糖尿病治療薬である。本薬剤は,単剤での使用において低血糖の危険性が少ないことや,体重減少の効果が報告されている。しかし糖尿病薬共通の副作用に加えて,尿路・性器感染症など本薬剤に特徴的な副作用が認められ,2014年に日本糖尿病学会は,「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を策定した。

 2018年,一部のSGLT2阻害薬が成人1型糖尿病患者におけるインスリン製剤との併用療法として適応を取得した。しかし1型糖尿病患者にインスリン製剤とSGLT2阻害薬を併用することで,ケトアシドーシスのリスクが増加するという報告が公表された。加えて,本薬剤が広汎で複雑な代謝や循環へ影響をきたしうることから,重篤なものを含め多様な副作用発症への懸念が持たれていた。海外においては,成人1型糖尿病への適応申請に対し,欧州医薬品庁(EMA)が限定承認の対応をしたほか,米食品医薬品局(FDA)では承認が見送られ,積極的な使用はなされていない。

 そのため日本においても1型糖尿病患者への使用に際し十分な注意と対策が必要として,日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」のアップデート版を2019年7月に公表した。同委員会は,これらの最新の情報を広く共有することで副作用や有害事象が可能な限り防止され,適正

使用が推進されることを目的に掲げており,学会員等への周知を図っている。

 今回のアップデートで注目すべき点は,1型糖尿病患者への使用,ケトアシドーシスへの注意喚起,皮膚症状への対応の3点である(表)。なかでもケトアシドーシスには用心すべきで,もともと1型糖尿病患者はインスリンが絶対的に不足しており,SGLT2阻害薬の併用によりケトアシドーシスの発生リスクは高まりやすい。Recommendation でも,「SGLT2阻害薬を服用していると,インスリンが中断されても血糖上昇を伴わないままケトアシドーシスへと進行するため発見が遅れ,重症化させてしまう。また,通常の糖尿病性ケトアシドーシスと異なり,治療初期より十分なブドウ糖補充が必須となる」,「ケトアシドーシスが疑われる場合はすみやかに専門医を受診するよう指導する」と,注意を呼びかけている。

 そのほか,今までの副作用情報や高齢者の特定使用成績調査の結果を踏まえた使用上での重要な注意点についても追記されており,副作用の事例とその対策では,1型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬併用時のインスリン減量法が明記されている。詳細に関しては,日本糖尿病学会のホームページ上で公開されている「SGLT2阻害薬適正使用に関するRecommendation」をご一読いただきたい。

参考資料

・日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」

(日本大学医学部附属板橋病院薬剤部 小田桐 功武,木村 高久)