そこが知りたい2021(令和3)年7月号

新たな金属を含有する医薬品〜ジルコニウム(Zr)含有医薬品について〜

 金属元素を含有する医薬品といえば,どの様なものが思い浮かぶでしょうか?

 金属元素は118ある元素のうちで単体の物質が金属的性質をもつものと定義され,実際には多くの医薬品に含有されている。代表的なものとしては,ナトリウム(Na),カリウム(K),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),鉄(Fe)などの電解質補正用製剤がある。その他には,制酸剤のアルミニウム(Al),抗リウマチ薬の金(Au),胃潰瘍治療剤の亜鉛(Zn)など多数あり,また,躁病・躁状態治療剤のリチウム(Li),造影剤のバリウム(Ba),抗がん剤の白金(Pt),リン吸着剤のランタン(La)といった希少金属(レアメタル)を含有する医薬品も存在する。

 このような中,2020年5月に新しい金属元素を含有する医薬品として,高カリウム血症改善剤の「ロケルマ®懸濁用分包」が上市された。一般名は「ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物」であり,希少金属の「ジルコニウム(Zr)」を含有する。ジルコニウムは原子番号40の元素で,名前の由来となった宝石のジルコン(ZrSiO4)は無色透明のものはダイヤモンド類似石として,古くから装飾用宝石として用いられている。

 本剤は,体内に吸収されない均一な微細孔構造を有する非ポリマー無機陽イオン交換化合物であり,1価の陽イオン(K+,NH4+)を選択的に捕捉し,2価の陽イオン(Mg2+,Ca2+)へ影響を与えずにH +及びNa +と交換し,糞中に排泄させ,消化管内腔における遊離カリウム濃度を下げることにより,血清カリウム濃度を低下させる。このようにK +への選択性が高いことで,従来使用されている樹脂製剤(ポリスチレンスルホン酸Na およびポリスチレンスルホン酸Ca)で報告がある血中Mg や血中Caへの影響の回避が期待される。また,その他の特徴として,承認された効能効果がしばり表現の無い「高カリウム血症」であること,開始用量と維持量があり,透析患者では用法・用量が変わること,そして1回ごとに水で懸濁して服用する懸濁用製剤であることなどが挙げられる(表)。

 本剤の有効性としては,高カリウム血症患者を対象とした日本人を含む国際共同第Ⅲ相試験(HARMONIZE Global 試験)の補正期治療において,本剤10g を1日3回投与したところ,血清カリウム低下作用は投与1時間後から認められ,投与後24時間で対象患者の63.3%,48時間で89.1%が正常血清カリウム値(3.5mmol/L 以上5.0mmol/L 以下)を示した。このように,血清カリウム低下作用は十分に期待できるが,緊急透析やグルコース・インスリン療法等の既存の緊急治療の代替での使用経験はなく,有効性及び安全性は確立されていないため,効能効果に関連する注意には「本剤は効果発現が緩徐であるため,緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しないこと。」と設定されている。

 次に,安全性については,RMP の安全性検討事項のうち,重要な特定されたリスクに「低カリウム血症」と「うっ血性心不全」が記載されている。低カリウム血症に対しては,「本剤投与開始時及び投与量調整時は,1週間後を目安に血清カリウム値を測定すること。以後は,患者の状態等に応じて,定期的に血清カリウム値を測定すること」および「血清カリウム値に影響を及ぼす薬剤(レニン・アンジオテンシン系阻害剤,抗アルドステロン剤,利尿薬等)の用量に変更が生じた場合,血清カリウム値の変動に注意すること」と規定されている。

 また,薬理作用においてK +との交換で Na +が放出されることから,Na 貯留に伴う浮腫やうっ血性心不全に注意が必要である。ちなみに本剤1g 中にナトリウムを80mg(食塩0.2g 相当)含有するため,1日10g ×3回(計30g)を服用した際の食塩換算量は6g となるため,塩分制限が必要な患者では特に注意が必要となる。

 今回紹介したジルコニウム含有医薬品は,高カリウム血症治療薬としては約45年ぶりの新規有効成分である。従来の治療薬との相違点をしっかりと把握し,その特性を活かし有効かつ安全に使用できるようにしたい。

 さて,次に医薬品に含有される金属は何でしょう?こういった観点から医薬品を見るのも楽しいのではないでしょうか?

参考資料

・ロケルマ®懸濁用散分包 医薬品インタビューフォーム

・ロケルマ®懸濁用散分包に係る医薬品リスク管理計画書

(日本大学病院 佐々木 祐樹)