そこが知りたい2021(令和3)年11月号

ダパグリフロジンのCKD 効能追加について

 ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬であるダパグリフロジンは,本邦においては糖尿病治療薬として2014年5月に販売を開始,2020年11月に「慢性心不全」の適応を取得し,広く臨床において使用されている。この度,「慢性腎臓病※」の効能追加が承認されたため,その有効性について紹介する。

(※ 効能・効果は『慢性腎臓病 ただし,末期腎不全又は透析施行中の患者は除く。』)

 SGLT2阻害薬の腎保護効果については,2019年にカナグリフロジンを被験薬としたCREDENCE試験の結果が報告されている。その後,2020年8月にダパグリフロジンを被験薬とした国際共同第Ⅲ相試験DAPA-CKD により,2型糖尿病の有無にかかわらず,慢性腎臓病(以下,CKD)に対する有効性が確認された。これに基づき米食品医薬品局は2021年4月,ダパグリフロジンのCKD への適応拡大を承認している。

 本邦においても2020年12月にCKD を適応症として効能追加が申請され,2021年8月に効能追加が承認された。これにより,ダパグリフロジンは本邦初のCKD 治療薬となった。

■DAPA-CKD Study

 CKD 患者を対象にダパグリフロジンの腎保護効果を検証した第Ⅲ相試験であるDAPA-CKD 試験について紹介する。

[対象患者]

○18歳以上

○eGFR 25~75mL/ 分/1.73m 2

○尿アルブミンクレアチニン比(UACR)200~5000mg/gCr

○最大耐用量の安定したレニン・アンジオテンシン系阻害薬を6ヵ月以上投与

※除外患者:1型糖尿病,多発性嚢胞腎,ループス腎炎,免疫抑制薬服用中など

[試験デザイン]

ランダム化二重盲検プラセボ対照試験:

 日本を含む21ヵ国386施設から登録された4304例を,CKD の標準治療にダパグリフロジン(10mg/日)を上乗せする群(2152例)とプラセボを上乗せする群(2152例)に割り付け。フォローアップ期間は最長45ヵ月で主要エンドポイントが681例発生するまで継続する試験として開始(図1)。有効性が想定を上回っているとして,独立データモニタリング委員会の勧告により試験は早期終了となっている。追跡期間の中央値は2.4年間。

[主要評価項目]

 eGFR のベースラインからの50%以上の低下,末期腎不全,心血管疾患または腎疾患による死亡の複合エンドポイント

[結果]

 主要評価項目の腎・心複合イベントは,ダパグリフロジン投与群197例,プラセボ群312例に発生,ダパグリフロジン群はプラセボ群と比較してイベント発生リスクが39%抑制された(ハザード比[HR]:0.61,95%信頼区間[95%CI]:0.51-0.72,p <0.001)(図2)。治療必要数(NNT)は19だった。

全集団の32.5%(1398例)が2型糖尿病を合併しておらず,糖尿病の有無で,主要評価項目のHR に差はなかった(糖尿病合併例でのHR:0.64,非合併例でのHR:0.50,交互作用のp =0.24)(図3)。

 DAPA-CKD 試験の結果では,糖尿病の有無にかかわらず,標準治療にダパグリフロジンを追加することで,腎不全,心血管死亡+心不全入院,総死亡のリスクを抑制することが示された。

■まとめ

 糖尿病治療薬として発売されたSGLT2阻害薬は,多くの大規模臨床試験やそのメタ解析において,心血管イベント予防効果や左室駆出率が低下した心不全の予後改善効果,CKD の予後改善効果など多面的な効果が報告されている。

 その一方,「性器感染症」や「体液量減少に伴う副作用(脱水・脳梗塞など)」,「正常血糖糖尿病ケトアシドーシス」といったSGLT2阻害薬のリスクについて,日本糖尿病学会より「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」3)が公表されており,認識しておく必要がある。

 これらのメリット・デメリットを理解したうえでSGLT2阻害薬を使用することが重要であり,今後は有効かつ安全な使用に関する情報の収集と評価および分析を行い,その結果を医療現場にフィードバックすることでより有用性が高まってくることに期待したい。

               

 

参考資料

1)Heerspink HJL,et al. Rationale and protocol of the Dapagliflozin And Prevention of Adverse outcomes in Chronic Kidney Disease (DAPA-CKD)randomized controlled trial, Nephrol Dial Transplant. 2020; 35(10): 1700-1711.

2)Heerspink HJL,et al. Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease, N Engl J Med 2020; 383(15): 1436-1446.

3)SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会:SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation.<http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf>

(東邦大学医療センター大森病院 横山 拓生)