そこが知りたい2021(令和4年)1月号

今冬COVID-19流行期におけるインフルエンザ対策

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進み,国内の感染者も減少傾向であるが,主に冬季に流行が懸念されるのがインフルエンザである。

 2019年末に中国湖北省武漢にて発⽣したCOVID-19は急速に世界中に広がり,現在もなお流行の波を繰り返している。一方,2019〜2020年シーズンのインフルエンザについては,COVID-19の流行に反し2⽉以降急速に患者報告数が減少した。また2020年冬季にはインフルエンザとCOVID-19の同時流行も危惧されたが2020〜2021年シーズンはインフルエンザの患者報告はほとんどなく,心配されていた同時流行はみられなかった。これは,COVID-19対策としてのマスク着用,手指衛生,三密回避,国際的な⼈の移動の制限等がインフルエンザの感染予防としても効果的であったと考えられる。

 では,2021〜2022年シーズンの流行予測はどうなるのか。南半球のオーストラリアでは2021年流行期においてもインフルエンザ患者数は昨シーズン同様極めて少数であった。このことより,2021年冬季は北半球でも流行を認めないのではないかとも考えられるが,バングラデシュやインドでは,2020年後半や2021年夏季に流行を認めた。これらの国々では,インフルエンザワクチン接種が普及しておらず,社会全体のインフルエンザに対する免疫が低かったと思われるが,流行を繰り返すことでこれらの地域でインフルエンザウイルスが保存され,今後国際的な⼈の移動が再開されれば世界中へ拡散される懸念がある。昨シーズンのインフルエンザ患者数は極めて少数であったため,社会全体の免疫が低下していると考えられており,今夏わが国においてRSウイルスが大流行したことと同様の事態を招く恐れがある。以上の点を鑑みて,日本感染症学会では,2021〜22年シーズンにおいても,インフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨している。

 インフルエンザワクチンの供給に関して,厚⽣労働省の発表によると2021〜2022年シーズンの供給量は例年と同程度が供給される見込みである。しかし製造効率の高かった昨シーズンと比較すると2割程度減少しており,ワクチンの効率的な使用と安全供給を推進するため,昨シーズン同様13歳以上は原則1回接種とし,医療機関には必要量のみを購入するよう働きかけている。

 COVID-19は今冬も多くの新規患者が発⽣することが予想される。そのような状況下ではワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い,医療機関への受診を抑制して医療現場の負担を軽減することも重要である。COVID-19ワクチンは3回目接種が行われるが,本邦では現時点でその他のワクチンとは,互いに片方のワクチンを受けてから中13日以上あけて接種することとなっている。両方のワクチンを接種するためには医療機関に複数回受診することが必要となる。受診回数の増加により接種率が低下することは避けるべき事態であり,米国ではすでにCOVID-19ワクチンとその他のワクチンの同時接種が認められているため,国内でも同時接種の承認に期待したい。

 

参考資料

・日本感染症学会インフルエンザ委員会「2021〜2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方」(2021年9月28日)

                      (順天堂東京江東高齢者医療センター薬剤科 初山 佳苗)